自衛隊は22日、鹿児島県・奄美群島の無人島で離島奪還訓練を実施し、演習内容を報道陣に公開した。中国が尖閣諸島沖縄県石垣市周辺で活動を強めていることを念頭に、水陸両用作戦能力を強化するのが狙い。陸海空の自衛隊が連携して着上陸訓練を国内で行うのは初めてとなる。
訓練は準備・撤収作業も含め1027日の日程で行われ、計約1300人が参加する。同島での着上陸訓練は23日まで行う予定だ。
自衛隊が22日に鹿児島県・奄美群島で行った離島奪還訓練は、中国軍などが南西諸島の無人島を不法占拠したケースを念頭に、自衛隊が連携する「統合運用」の練度を高める実践的な演習となった。国内での統合訓練は、中国への配慮や地元の反対で年連続で見送った経緯があり、自衛隊は「水陸両用機能はまだ十分ではない。訓練も緒についたばかりだ」岩崎茂統合幕僚長とし、訓練態勢の充実をはかる。
ザッ、ザッ、ザッー。鹿児島県瀬戸内町の無人島、江仁屋離島の砂浜に、陸上自衛隊「西部方面普通科連隊」長崎県佐世保市の隊員約30人の足音がかすかに響いた。迷彩服姿の30人は隻のボートに分乗し砂浜に接近、一斉に上陸すると小銃を構えながら静かに島の茂みに分け入った。
この日の訓練は、南西諸島の無人島を外国人が占領しているとの想定。無人島の沖合数キロに近づいた海上自衛隊の輸送艦「しもきた」からエンジン付きのゴムボートと47輸送ヘリを使って、陸自部隊が上陸した。
主力部隊30人が上陸する前には、島の状況を探る偵察部隊10人が先に潜入し、上陸地点の砂浜の安全を確認。さらに、輸送艦からは車両を輸送するエアクッション型揚陸艇「」などが次々と島に向かっていた。
周辺海域には、一連の上陸をサポートするため、潜水艦を警戒する護衛艦「くらま」や掃海母艦「ぶんご」など計隻が展開し、距離を置きながら輸送艦を取り囲んで監視活動を行った。
防衛省は離島防衛を強化するため、平成30年度までに西部方面普通科連隊を米国の海兵隊を模した「水陸機動団」に新編し、水陸両用車52両の配備も計画している。また、機雷除去や潜没潜水艦の探知能力を備えた「コンパクト護衛艦」も33年度に新規に導入する方針だ。
今回の訓練は、武装した漁民が無人島を占拠するといった有事手前の「グレーゾーン事態」にも応用が可能だ。訓練を視察した武田良太防衛副大臣は「南西諸島防衛ではさまざまな足りない部分がある。ありとあらゆる脅威への対応能力を充実させなければならない」と強調した。